買い手の関心は、それぞれの役割によって強く影響される
会社内では、すべての役割において、それぞれ独自の優先順位や意見、機能があります。社内の誰かに何かを売り込もうとする場合には、必ず話している相手のことをよく理解しておく必要があります。イベントなどネットワーキングに出かけると、さまざまな業界や企業、会社内の役割の、幅広い人たちに出会います。幸いなことに、日本では名刺交換の習慣があるので、今さっき会った人がどの部署でどんな役割の人なのか、簡単に分かります。私は、名刺の日本語表記で漢字を確認することは良い習慣だと常々思っています。英語の翻訳は時々間違っているからです。役割を知っておくことにより、彼らの主要な関心ごとに集中させてセールス・トークを展開できるため有益です。
私たちがしていることに彼らの関心を引きつけることができれば、彼らは面談に応じてくれることでしょう。しかし、ここからが注意を怠らず、相手の背景を完全に理解しなければならないところです。
彼らが CEOであればたいてい、どうやったら全体をAからBに移すことができるのか、といった企業の戦略に集中していることでしょう。このような人たちは自分に影響を与える多数のドライバーを持っています。彼らは企業全体の方向性のことを考えています。また、社内で強調されている現在の主要なテーマは何か知っています。従業員の質についてとても詳しく把握しています。同様に、ギャップや足りない点についても非常によく理解しています。自分たちの偉業を残さなければなりません。スティーブ・ジョブズが言ったように、「宇宙に凹み」を作るのです。この機会を利用して、次のレベルに進化したいと思っています。自分たちのビジョンが確実に実現するように、そして誰もがその実現のために支援することを望んでいます。
と、このように、CEOと会うときは、その会社の年次報告書を読んで、彼らが計画していることを理解しておいた方がよいでしょう。まだ株式に上場していない会社であれば、上場の予定についてマスコミによる報道があるかどうか調べる必要があります。「御社はどのようなビジネスをされていますか」などといった、馬鹿な質問でCEOの貴重な時間を無駄にしたくはありません。
私たちは、下調べをしたことを示すことができ、訪問の目的は、この会社の目標を実現するための支援をCEOに提供するために来たのだということを示すことができるような質問をしなければなりません。営業が面談の前に何も下調べもせず、明らかにこの会社のことをそのように軽く扱っていたら、CEOはそのような会社とパートナーシップを組もうという気になどなるでしょうか。このようなタイプの人間に、CEOはビジョンの実現化の一翼を担わせようなどと思うでしょうか。絶対にそんなことはないでしょう。
一方、CFOは、今月のキャッシュ・フローにおける支払いの影響に関心があります。CFOの仕事は、ビジネスを安全、効率的、そして効果的に保つことです。彼らは、確実に投資による効果があって支出を正当化できることを望んでいます。また、支払い期間と時期はいつか知りたいと思うでしょう。この項目は、貸借対照表に資産として移せることができるのか。価格をさらに下げることができるか。彼らは、小数点 3 桁ほど詳細な数字を好み、データ、証拠、証言、実証などを愛します。ビジネス拡張やコスト削減のためにお金を費やすことで、さらに多くのお金をもたらすのであれば、一心に耳を傾けてくれることでしょう。収益の観点で話をするようにしないと、買い手はパートナーシップには興味を持ってくれないでしょう。
技術面から見る「テクニカル・バイヤー」は、仕様が彼らの求めるものを満たしているかに関心があります。規格、詳細、寸法などに興味があり、また、その分野において十分に訓練されていて、投資効果を正当化する必要があります。これはたいてい、効率性やコスト削減の向上などで測定されます。既存のシステムを完全に最大活用できなくて、でも、既存のシステムをさらに活用できる方法がある場合は、彼らはそのことについて詳しく知りたいと思うでしょう。新しくてより良いシステムがあれば、そのことについて聞きたいと思うでしょう。このタイプの人たちは新しいこと、複雑なこと、高価なことが大好きです。彼らは、もっと投資をしてくれるようにCFOとCEOを説得できるように、私たちの情報で十分に武装する必要があるのです。
使いやすさの面から見る「ユーザー・バイヤー」は、使いやすさ、機能性、そしてうまく行かなかったときに誰に連絡するのかを心配しています。このタイプのバイヤーは最終的な意思決定者であることは稀ですが、上級管理者たちに大きな影響力を持つこともあります。彼らは、より効果的になるためにこれが必要で、そのため、社内の他の人たちを説得するための情報を必要としています。私たちは、投資が価値あるものであるということを示すために何らかの測定手段またはマイルストーンを設定しようとしなければなりません。ここが、他の似たようなユーザーからの事例が効果を発揮するところです。会社内でお金を扱う人たちは証拠を求めますが、これは、たいていは数字が関わってきます。購入について彼らが社内で支持を得られるように、データと実証をしっかり準備してください。
買い手の関心は、それぞれの役割によって強く影響されるということを理解できれば、「質問する」スキルと自分たちの解決案を最良の方法で提示できる能力をより効果的に磨くことができるでしょう。