プレゼンテーション

プレゼンテーション中に立つべき位置

立つ場所もプレゼンテーションの効果的な演出のひとつです

立ち位置をどこにするかは、会場到着前に主催者側が会場をセットしているのでプレゼンをする人にとっては通常問題にすらなりません。話をする場所は指定されています。しかし、講演会関係の専門家の人が指定してくれたのか、それとも単なる椅子や机を運ぶ会場のスタッフに会場設営してもらったのでしょうか。残念ながら講演会場の設営ノウハウがある人とロジスティックを担当するメンバーが同じ人であることは稀なのです。

ではどこに立てばよいのでしょうか。これは会場の大きさ、部屋の明るさ、聴衆の数、演壇の設え、どこにスクリーンがあるのか、さらにはこちらが何を達成しようとしているのか等によって変わります。

以前私は大変効果的な講演に出席したことがあります。そこでは演壇には何もなかったのですが、スピーカーが見えない状態で急に話が始まったのです。実はスピーカーはラベル・マイクロフォンを着けて聴衆の後ろの部屋の陰に隠れて話していました。会場の音響はどこにそのスピーカーが立っているのかが全く分からず、そのため会場はざわついて会場の皆さんはスピーカーがどこにいるのかを見つけようとして聞こえる声に耳を澄ませました。彼は歩いて演壇に上がり、話をつづけました。

聴衆の頭の中が散らかっているのをすっきりと整理して注目を集めようとして、彼が、人がふつう話を始める場所を変えて始めたのは大変効果的でした。

スクリーンを利用する場合に、スクリーンが頭上高いところに吊るされているのか、大きなスクリーンが左右にあるのか、背の高さくらいのサイズで演壇の真ん中にあるのかで異なります。会場が小さい場合はスクリーンは普通背の高さで、一般的には聴衆から見て演壇の右側にセットされています。この場所に置くのはなんら特別な配慮があるわけではなく、その選択は単に無造作であり、スピーカーにとって効果的であるようにではなく、よくあるのが電源が近いとかケーブルの長さだったりすることが多いのです。

聴衆から見てスクリーンの左側に立ちましょう、そうすれば聴衆は顔の表情と体の動きを読むことができ、目を右へ動かしてテキストまたはスクリーンの画像を見ることができます。左から右へ読み進みますのでこれは自然の動きです。スクリーンはできれば従属的であってほしいと思いますので、会場の設営手順をスクリーンのスライドではなく、こちらを最初に見てもらえるようにしなければなりません。顔の表情は、スクリーン上のどんなものよりも対話のツールとして数百倍もパワフルなのです。

大型のスクリーンが頭上にある場合には会場がかなり大きいでしょうし、演壇も非常に広いと思います。一か所にじっとしているのではなく、演壇全体を使いましょう。よく見かける素人のプレゼンターの対応のように、あがってしまい、そわそわして、行き当たりで演壇を行き来したりするのを言っているのではありません。演壇の右の縁からいちばん左の縁へ移動してすべての聴衆の注意を引くようにすることを言っているのです。演壇の端から落ちないようにだけは気を付けましょう。実はそれは起こりやすいことで、聴衆にばかり気を取られていると演壇の端の視覚がなくなることが多いのです。

最初に大きな演壇の真ん中、それも聴衆になるべく近づいて始めましょう。後ろの方または上の階の1、2、3列目に座っている人にとっては豆粒ほどにしか見えないということを覚えておいてください。

ゆっくりと左端まで移動してそこで止まります。会場のこちら側の聴衆はひきつけることができます。数分おいてから今度はゆっくりと真ん中までもどって止まります。次にまたゆっくりといちばん右端まで移動して止まります。それからまたゆっくりと真ん中に戻ります。ここまで時間がたてば、熱のこもった話が進んでいることでしょう。

もう一つ付け加えておきますと、会場が大きいときには、ジェスチャーと表情を大きくしてみましょう。会場の大きさに合わせてこちらも大きくする必要があって、そうすることによって聴衆を引き付け、会場全体を使って力を発揮することができます。会場には早めに行って一番遠い席に座ってごらんなさい。この時、演壇に立った時にはスピーカーがどれだけ小さく見え、自分自身を大きく見せるようにしなければならないことが良くわかります。

ポディウムが置かれているところに立たなければと思うかもしれませんね。どうしてでしょうか。今日自動スライド装置が手に入るので、こちらは動き回ることが可能です。ページをクリックする人があまり上手ではない場合には、仲間の一人をスライド進行担当として指名してサインに従ってラップトップを操作してスライドを進めさせることができます。あるいは自分でラップトップに戻って操作することもできます。ポディウムの後ろに張り付いてはいけません。体のしぐさで意思を伝えることができなくなってしまいます。

ポディウムの後ろに張り付くのであれば、上半身の動きが出来るだけ聴衆の目に触れるように努めるようにしましょう。この場合、会場のスタッフに小さな台をポディウムの後ろにおいてもらうように頼みましょう。マイクの設定が、用意された台の高さによってはちょっと厄介になるかもしれません。もしマイクを台から外す必要があればそうしてください。そしてできるだけ高く置いてスピーカーが楽にみられるようにしましょう。
会場がすこし狭い場合は、スクリーンの左側に立つことはできますが、話している内容の組み合わせ次第で三つの戦略的な距離を用いることができます。話を始めた時は縁台の後ろと聴衆とのほぼ中間あたりに立ちます。中立ゾーン、あるいはグリーン・ゾーンと言います。

伝えようとしている中で細かな点に強く注意を払ってもらいたいポイントがある場合は、聴衆の近くまでできるだけ前に乗り出して行きます。これを強調ゾーンあるいはレッド・ゾーンと言います。そこには長くいないほうが良いでしょう。聴衆にとってはプレッシャーが強すぎるのです。真ん中まで戻り、強調しすぎを調整するようにします。

より大きな、あるいはマクロのポイントに触れる場合は縁台の後ろの方に動くようにします。これをビッグ・ピクチャー・ゾーンあるいはブルー・ゾーンと言います。

通常照明はあまり問題にはなりませんが、ただ、ステージの担当者が素人であったり、知識のないボランティアの場合、スクリーンのコントラストが必要と思って照明を暗くしたり消してしまったりするので注意が必要です。そんな時は、何をしている場合であっても照明を元に戻すように要請しましょう。スピーカーとして聴衆に見ていてもらわなければなりませんし、こちらも聴衆の顔を見る必要があります。こちらの話したことに対しての反応を計る必要がありますし、皆さんが関心を失ってはいないかをチェックする必要があります。

あるスピーカーが最近東京でTEDトークを講演しました。ホログラムのような先鋭的な技術が盛りだくさん採用されていたのですが、目に見えない仕切りがスピーカーと聴衆を分断してしまいました。それは聴衆にとっては目に見えないものでしたが、スピーカーを目で見ることはできました。一方でその逆はそうではなかったのです。これはまさに悪夢でした。聴衆に対して話しかけているのですが、こちらからはその聴衆が実際目では見えないのです。話をする環境が整っているか否かを、話をする前にチェックするとか、早く会場に着いて話の効果を台無しにしてしまうような設備不備を直しておくことはやっておく価値があります。

クラブのようにより小さい親密感のある会場の場合にはよくあるケースですが、照明がやや弱いことがあります。このような場合にはプロジェクターなどを利用したり、光を投影してこちら側も聴衆側も明かりが得られるようにすることが可能です。また、聴衆のごく近くまで近づいて立つこともできます。そうすることによって照明が足りないのを補うようにします。

パネルディスカッションの場合で皆さんが着席しているような場合は、最初の発言をするときにはできれば立って行うのが良いでしょう。その後は、着席しても構いません。座った状態で重要な諸ポイントについていろいろと議論を行うのです。立ち上がって話すことによって、ボディ・ランゲージの力をフルに発揮して議論を進めることができます。立ち上がって膝の上に置いたままのメモには頼らずに話すことができればより一層信頼感を獲得でき、自分の論点をさらに進めることができます。日本では演台の上は込み合っていて足元には低めのテーブルが設えてありますので、なかなかうまくいかないかもしれませんが、できるのであれば座ったままではなく、おそれずに立ち上がって話すようにしましょう。

スピーカーとして効果的であるためには、補完材料として、最適な設備環境を揃えることに配慮する必要があります。最適な会場設営をするのに、頼りにならない人たちに依存してはいけません。自らチームを組んで、話をする環境づくりを常に主導しておきましょう。

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