クライアントに「高い!」と言われたら?
ソート・リーダーシップ・シリーズ ビジネス達人 #23 (セールス)
セールスは勝ち負けではありません。近江商人の哲学の「三方良し」という言葉があります。皆様もご存じだと思いますが、これは買い手であるお客様、売り手である自分、世間の三方に利益がある!皆がハッピーになる!という哲学です。これは、セールスに向かう態度設定という意味で、とてもしっくりきます。皆がハッピーになるならば、セールス活動を通じて、どんどんお客様を、そして世界中をハッピーにしよう!そんなワクワクした気もちになります。難解に思えるセールスサイクルは実は楽しいお客様との旅路と考える事ができるようになるのです。
モノとサービスへの対価としての価格が設定されます。モノは目に見え、手に取れる商品であるため、価格の妥当性を見定める事が比較的容易です。サービスは形がない分、価格設定が難しいかもしれません。どちらの商品でも、価格に対する「価値」や「利益」をしっかり伝え、お客様を成功に導く事こそ、セールスパーソンが身につける必要があるコミュニケーション力の一つという事は皆様ご存じだと思います。
弊社のセールストレーニングの参加者の皆様に、クライアントからよくある反対意見はどのようなものがありますか?と尋ねると必ずと言って上がってくるのが「高い!」です。クライアントから「高い!」と言われて、内心どう思いますか?と受講者に訊くと「やっぱり。そうきたか・・・。」「そんなことはない、こんなに良い商品なんだからむしろ、安い!予算がつかないなんてもったいない!」などいろんな思いがあるようです。皆さまはどう思いますか。
おととい、私はあるお花屋さんの前で500円の可愛いブーケが目に止まりました。私はお花を買いたかったので、「今、たまたま通りかかりで、お財布をもってきていなくて、クレジットカードしかもっていないのです。」というと、店員さんは「カードでしたら3000円以上でお願いしています。」とおっしゃいました。そこで、私は「そうですか。わかりました。ありがとうございます。」といってその場を立ち去りました。歩きながら、私は、自分が店員さんだったらどのように対応するだろう。と考えてみました。 500円のブーケなんて、それだけでも破格で利益がでないのだから、500円も持っていないお客様には売らない。という考えもあるかもしれません。
会社の規定や、方針、それぞれの立場で考え方が変わってくると思います。
この場合は、私は現金自体を持っていなかったので、「高い!」と反論したわけではないですが、広い意味で価格が理由で購入を断念したケースです。
皆様が店員さんだったら、どのように対応しますか。
価格が理由で購入を躊躇するクライアントに対して、どのような対応ができるか、いくつかの方法を考えていきたいと思います。
1.もしかしたら、お客様のポケットにいくらか入っているかもしれません。今持っている分だけでもいいですよ?と提案してみる。(これは、割引ですね)
2.同じく、もしかしたらいくらかポケットにはいっているかもしれないケースですが、今は、持っている分だけお支払いいただき、あと残りは今度でいいですよ。と提案してみる。(分割払い)
3.今、お花がキレイなうちに、このお花をお持ち帰りいただいて大丈夫です。次回来たらお支払いください。と言う。(完全に信用ビジネスですが、私ならお客様を信じてくれた、そんなお店にはかならず戻っていって、次はもっとたくさん購入します。そのお客様が戻ってこない可能性もありますが、マーケティングとしては500円の投資でお客様とのつながりが太くなるのであれば、将来的にお互いにハッピーと考えるかもしれません。)
4.少なくても、お客様との関係を作るという意味では、お取り置きをしておくので、後ほど戻ってきてください。または、他のお客様との公平性を考えると本当に残念ながらお取り置きはできないのですが、お早めに戻ってきてくださいね。とまたのご来店を歓迎する誠意を伝えることもできたかもしれません。
その他に、今、ポケットにお金が全く入っていなくても、さらにアップセル、クロスセルでクレジットカードで決済していただく。という方法もあるかもしれません。たとえば、
5.ほかにも欲しいお花や鉢植え、花瓶などがあるかお聴きして、3000円以上のセットを作り、クレジットカードで決済してもらえるように話す。
6.500円のブーケを6回買える回数券を3000円で発行し、クレジットカードで決済していただく。(最低でもあと5回はお店に足を運んでいただけるという意味では、サブスクビジネスの考え方にも通じますね)
ということで、他にもあるかもしれませんが、私は主に6通りの方法を思いつきました。この500円のブーケを買えなった経験から、たくさんの学びがあったなと思いました。
これをご覧の皆様の案件はもっと大きい案件かもしれません。規模の大小はありますが考え方は同じなのではないでしょうか。また、会社の規定で、支払い方法や、金額はフィックスされているので、交渉に応じることが全く不可能という方もいらっしゃるかもしれません。そのような方でもお客様に歩み寄って本当の問題点が何かを聞き出せていれば、意外にも定価で売ることができたり、またはもっと売上金額を高くできる可能性もあるという事なのです。その視点をお持ちであれば、セールスのお仕事をさらに楽しめるのではないでしょうか。
さて、お話をセールス研修の受講者の例に戻しましょう。
「高い!」と言われたときには、そう思う理由を尋ねましょう。(実際の価格、製品自体に満足していないのか、予算配分の時期、社内で競合するプロジェクトに関する懸念かもしれません。)セールスパーソンとしてはクライアントの懸念はそのうちのどれなのかを知る必要があるのです。
単に価格が商品やサービスに見合わないという意味ではなく、「予算の問題」という答えが返ってくることがあります。その場合、セールスパーソンとしては、さらにお客様がおっしゃる「予算の問題」の真の理由明らかにする質問をしてみると、「金額がその四半期の当社の予算配分を超えているからです。」という答えが返ってくるかもしれません。
ということは、結局のところ値段が高すぎるわけではなく、複数の四半期にまたがる分割払いなら購入は可能。ということになるのです。それであれば、お値引きが適切なソリューションではなく、複数四半期にまたがるご請求に分けるというソリューションが提供できるのです。
この例から、「高い!」は文字通りの意味ではない事をしっかり把握し、クライアントの声をよく聴いてみましょう。セールスとして、お互いをハッピーにする為に好意で質問をしている誠意が伝われば、クライアントは私達を信頼して状況を打ち明けて下さると信じます。
私達が目指すのは、クライアントから信頼されるアドバイザーとなる事なのです。デール・カーネギーは、友を得て影響を与える!が人間にとって一番大切なスキルであると言います。そう、セールスパーソンのお仕事はクライアントのバイイングジャーニーに欠かせない素晴らしい仲間となる、楽しいお仕事なのです!
Dr. Greg Story
President of Dale Carnegie Tokyo Japan