リーダーシップ

ハードなリーダー?ソフトなリーダー?

ソート・リーダーシップ・シリーズ ビジネス達人 #25 (リーダーシップ)

リーダーシップ研修でファシリテーションさせて頂くと、ほとんどのセッションで頂くコメントがあります。それは、「リーダーの仕事は、チームが成果を出すために、強く指示をし、チームの仕事やプロセスを管理する仕組みづくりが大切なのだと思っていました。」や、「リーダーは嫌われてなんぼ。と思っていました。」というコメントです。このようなハードなリーダーのイメージが日本には根強く浸透している傾向があるように感じます。日本では特に、職場では右習え!の横並び一直線で個性を消して、会社の為に尽くすことが求められる環境という企業も少なくないようです。実は、これは日系企業のみならず、外資系企業でも同じような傾向にあるようです。もちろん濃淡はありますが、実際の声を聞いてみると、実はリーダーの皆さんのお悩みは国境を越えても同じ傾向にあるようです。以前、アフリカ出身の方が日本語でリーダーシップ・トレーニングに参加して下さった事があります。その方が、研修最後のコメントで「今回日本語でがんばって研修に参加してみて良かったです。私たちリーダーの悩みは世界共通なのだと知り、少し安心しました。」とおっしゃっていた事が今でも深く胸に残っています。

 

実際に、指示命令を与え管理する「ハード」なリーダーが組織を統率した場合、組織はどうなっていくでしょうか。「ソフト」なリーダーのイメージをトレーニング受講者の皆様にお聴きすると「優しいのは理想。でも、舐められそう・・・。チームメンバーのアウトプットが期待値に達しないような気がします。」などというコメントもあるのは事実です。

 

さて、皆様は「ソフト」なリーダーとはどのようなリーダーだと思いますか?そしてこの多様性の社会でどのように強いチームを作る事ができると思いますか?チームメンバーに対して厳しい「ハード」な態度で接すると、チーム内に「媚びる姿勢」や「イエス・マン」が誕生し、失敗することに対する「恐れ」が組織内に充満してしまう傾向にあります。もしも自分が失敗をしてしまった時を思い描いてください。ソフトな上司に「失敗は落ち込むためにするのではありません。学びや成長の為に起こるのです!」と勇気づけられたらどう感じますか。「そんな事を言ってくれる上司の為に、もっと工夫をして学びを活かそう。さらに良い成果を残そう!」と思うのではないでしょうか。ところが、いざ自分が上司の立場になると「やはりどう考えてもソフトなリーダーは、メンバーがつけ上がる。いい気になる。舐められる。」という不安がつきまとうのです・・・。これらに対応する効果的な方法はあるのでしょうか。

 

ソフトでありながら、しっかりとリーダーシップを発揮できるリーダーになる為にはどうすればよいでしょうか。早速見ていきましょう。

 

一つには、リーダーの皆さんは、メンバーの真の関心を知って、メンバーの為を想い、それぞれの方の成長を促す事にどれだけコミットできているでしょうか。忙しい立場でありながら、タイムマネジメントを駆使して、プランニングなどに時間を割き、いつも落ち着いて、メンバーの声に耳を傾けられる器があるリーダーは信頼されます。メンバーの目線で物事を観れる余裕がありますか?チームメンバーも自分の上司が自分の興味関心に沿ったチャレンジや機会を与えて成長を促してくれる方だったら、そのような上司を心から尊敬するでしょう。決して舐められたりはしないでしょう。積極的にその上司の声に耳を傾けたくなります。

 

もう一点はメンバーが自分でも気づいていないような自分の良い点を見つけて認めてあげられるリーダーになってほしいと思います。デール・カーネギーの原則に「まず褒める」という原則があります。ただ褒めるのではなく、褒めた後が肝心です。褒めた後に「でも、ここが良くなったらもっといいよ。」と言ってしまう事はありませんか?せっかく褒めたのに「でも」と言われると、たったその一言で「なんだ、今、上司が褒めてくれたのは注意をするための前置きだったのか・・・。」と、不信が募り、せっかく褒めた事が逆効果になったりしてしまいます。デール・カーネギーではgood and betterを推奨しています。良い点を認めた後に「そして、ここをこのようにするとさらに良くなると思います!」と伝えるのです。「でも」ではなく「そして」を使う事で、全くと言っていい程、受け取り方が変わります。これは相当意識をしないと難しいものです。日々トレーニングを積んでいくと無意識レベルでこれができるようになっていきます。そして、good and betterで伝えないとちょっと気持ちが悪くなってしまう日がくるのです!

 

さらに、Good and Betterが定着した方は次のことに挑戦していくと、さらにメンバーの方は積極的に協力をしてくださることでしょう。それは、リーダーの皆さんのお伝えすることが、そのメンバーの個人的な目的と希望に沿っているというメッセージを発することができるようになることです。そのためには、リーダーは、そのメンバーの個人的な価値観を知り、各パーソナリティスタイルにあった個別の対応が必要になるのです。多様性の社会では、国籍、人種、性別、年齢だけでなく、究極は全ての「個」が持つ価値観やパーソナリティに合わせて対応していくことが求められているのだと思います。その方の良い点をGoodとしてお伝えした後に、その方の個別の希望や価値観に沿った成長をサポートするためにBetterを伝えます。さらには、「あなたのこのようなところが素晴らしいです。そしてあなたのこの希望を達成するためにはこのような事に注力したらもっと良くなると思いますが、どうでしょうか。」というような感じで、GoodとBetterの間に「理由・なぜ」の部分も伝えてあげられると、素晴らしいと思います。

 

会社が結果を出すためのプロセスを管理するのがマネージャーだとしたら、人を育て、会社の成長に貢献するチームを創り結果を出していく事がリーダーの役割であると言えます。チームメンバーが正しく任務を遂行できると信じ、彼、彼女たちに仕事を委任し、人材を育成することができるリーダーへとステップアップしていただきたいと心から願っています。

 

ソフトなリーダーは、弱いリーダーではありません!ソフトなリーダーとは、柔軟性を持ち、他者に影響を与える心のこもったリーダーシップを図れるリーダーなのです!!!

 

Dr. Greg Story

President of Dale Carnegie Tokyo Japan

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