リーダーシップ

リーダーシップにおけるオーナーシップとワンマンリーダーの違い

チームメンバーの強みにやり方を合わせる

人の上に立つ。もしあなたが完全にワンマンなリーダーとして、ただ部下を従わせようとするだけなら簡単なことでしょう。でも、すべてのやり方を指定し、常にほぼすべてのことに関して細かく徹底的に確認しなければなりません。アイデアはすべてあなたから出されなければならず、チームに求めることは、それをそのまま受け入れることです。あなたは最高指揮官として指令を出し、彼らはあなたの手となり足となって働くのです。実際、日本にはこのようなリーダーたちがたくさんいます。
 
すべてを統括しているので、管理という点ではうまく行っていると言えるでしょう。でも、そのためにあなたは1日中指令を出し続け、指定したとおりにきちんと実行されたかどうかを確認することに終始してしまっています。このような超管理体制は、一貫性に富んで予測がしやすく、コンプライアンス部の長たちはこのような環境を大変好みます。何事も管理第一だからです。これは、ダグラス・マクレガーが動機付けの研究について書いたX理論のリーダーの姿です。厳格に管理し、それに従わなかった場合は厳しい罰を与えることを基礎として機能するリーダーたちです。
 
でも、これはどこかで壊れるものです。なぜならひとりひとりと関わったり、彼らの仕事を直接確認したりするための時間をあなた自身が十分に管理できないからです。ここが、ミドル・マネージャーが必要になってくるところです。この同じ管理手法をミドル・マネジャーに適用し、個人的には前線から離れていればよいのです。
 
また、このような管理体制では、ビジネスにおけるイノベーションの可能性も制限されてしまっています。市場競争がなくて、競合他社もイノベーションに励んでいなかったら、それでもよいでしょう。でも、そんなことは絶対にないので、社内を徹底的に管理できても、イノベーションで勝っている競合に市場を開け渡すことになってしまいます。
 
また、後継者育成の点でも問題があります。リーダー予備軍たちがみんな上司から手取り足取り面倒を見てもらって育ってきたような人ばかりだったら、一体誰が出世階段を駆け登ってリーダーに就くことができるでしょうか。ビジネスを引き渡せる有能な人が必要なのです。しかし、問題は有能な人たちはこのような環境では辞めていってしまうことです。彼らは自分たちのアイデアや熱意を持っているので、トップダウン型のワンマン体制では窮屈に感じてしまうからです。
 
人は自分自身が関わって築き上げられた世界にオーナーシップを感じるものだということはお分かりでしょう。それなら、リーダーとして、あなたはビジネスに従業員が関わってもらえるように仕向けなければなりません。従業員にエンゲージしてもらわなければならないのです。エンゲージしていなかったら、向上しようなどという気になるでしょうか。イノベーションを生むには、エンゲージメントが必要で、エンゲージメントを生むには、オーナーシップの意識を与えるようにしなければならないのです。
 
でも、実際にはあなたがリーダーシップや、イノベーション、アイデア創出の面で期待できる人たちは、ついて来てはくれません。日本は言われたことに従うことに重きが置かれる国で、多くの人がそのことに満足しています。何をすべきか言ってもらえれば、それを上手にこなすから、指図はしないで欲しい。
 
この姿勢は、ビジネスが目標に向かってまい進としようとしている時にはあまり助けにはなりません。誰も将来について明確な見通しがないため、私たちはビジネスを 5 年間のタイムスパンで考えなければなりません。5 年後には市場や競合、サプライヤーはどのようになっているでしょうか。でも、上司はそれを教えることはできません。私たちみんなが一緒になって将来を占い、それを土台として計画を立てなければならないのです。
 
リーダーとして、あなたは一歩大きく進んで、このプロセスのオーナーシップを部下に譲ろうと考えているかもしれません。しかし、現実はそのチャンスを握れる人と握れない人がいます。ミドル・マネージャーたちは、部署の将来について自分たちのビジョンを描くチャンスを与えられているのに、何か月経ってもまったく何も生み出しません。一体どうしたらよいでしょう。
 
部下にオーナーシップを与える必要性を本能的に感じたら、ワンマン型のリーダーシップは止めなければなりません。でも、この「自らビジネスのオーナーとなる」環境で活躍しない部下もいるでしょう。まず、第一に、誰もがリーダーのあなたと同じではないし、あなたのようになりたいと思っているわけでないからです。ここ日本では、誰かに何をすべきか指示してもらわなければいけない人もいるのです。そのリーダーはあなたかもしれません。それならその役割を務めたらよいのです。
 
あなたは、言われたことしかできない人や、オーナーシップを取れない人の重荷をリーダーシップ・チームに背負わせることはできないと判断することもあるでしょう。たいていの場合、このような人たちは、その分野で深い知識を持つ、いわば機能的な専門家であって、彼らの専門知識を失うようなことがあってはなりません。これは、年齢や段階、専門性に基づいてリーダーに昇格するという、日本では典型的なパターンです。彼らはリーダーシップの能力に基づいて上に引き上げられたわけではなく、人を率いていく方法についてトレーニングを受けたわけでもありません。
 
誰か、実際のリーダーになれる人をチームの上に置き日常業務の監督を任せるというのも良いでしょう。そうすることによって彼らを失わずにすむと同時に、上級レベルのアイデアや議論への参加は他の人に任せることができます。あるいは、あなた自身が部署のブレーンとなって、ただ、何がなされなければならないかを伝え、その計画の実行状況を監督するだけでも構いません。
 
大切な点は、チームメンバーの強みにやり方を合わせることです。彼らの弱みを取り除こうとするかわりに、強みを伸ばすことで向上を目指すのです。あなた自身のことを振り返ってみてください。これまで自分の弱みをどれだけ取り除くことができましたか?自分のことは100%コントロールできても、部下たちの弱みを取り除くことは恐らくできていないはずです。彼らの強みを伸ばし、正しい人材を正しいバスに乗せ、正しい座席に座らせようではありませんか。

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