プレゼンテーションで成功するための唯一のポイントとは?
聴衆に焦点を合わせること
先日、私はある友人と、彼のオフィスの近くにあって、彼が贔屓にしている大変感じの良いイタリアン・レストランで昼食をとりました。食事中、彼はアメリカ本社で世界各国の支社長会議があり、日本支社の経営状況について報告しなければならないと言いました。私は、それは非常に高い注目を浴びることで、さぞかしプレッシャーの多いプレゼンテーションではなかろうかと思いましたので、デール・カーネギー・トレーニングのハイ・インパクト・プレゼンテーション・コースがいかに素晴らしいかについて話をしました。私自身、20 年前に受講していたら、出世スピードも早まったのに残念に思うぐらいです。それはともかくとして、この友人は辛抱強くこれをすべて聞いた後、ある究極の質問をしました。「プレゼンテーションで成功するための唯一のポイントとは何なのか」と。
彼が言おうとしていたのは、要は優れたプレゼンターになるために最も重要なスキルを 1 つだけ挙げるとするとそれは何か、ということでした。これはビジネスにおいて非常に大切な質問です。結局のところ、これは私たちが世間の皆に見せようとしている個人と会社のブランドなのです。決して失敗したくはありません。私はためらいなく「聴衆に焦点を合わせること」と答えました。
そりゃ、そうですか。でも、それって本当はどういう意味ですか?誰でもプレゼンテーションをするときは聴衆に焦点を合わせていませんか?もちろんそうです。私たちは聴衆に焦点を合わせるべきです。でも、実際には自分たちはそうしていると思い込んでいることがよくあります。プレゼンテーションを細かく分析してみると、人前で話をするときに聴衆に焦点を合わせることで、私たちの成功の度合いが大きく変わってくるということが見えてきます。
プレゼンテーションを準備する段階で、何を言いたいかは頭にあります。その分野の専門家であれば、その内容は素晴らしいことだと思うので共有したいことはたくさんあります。でも、聴衆が最も関心を持っていることは何かということについてはほとんど考えていないかもしれません。なぜプレゼンテーションを聞きに来るのでしょう?何が聞けると期待しているのでしょう?会場にどんな人がいるのかについて調べようともしないかもしれません。年齢層は?男女の比例は?このテーマに関する専門知識のレベルは?話の焦点を、聴衆を感心させることに合わせられるように、十分に調べましたか?それとも、自分たちが関心のあることだけを話していましたか?
演壇に上がったときに誰のことを考えていましたか?話し始めたときに、聴衆のことは考えず、上がってしまっている、などと、自分たちのことに焦点を合わせていませんでしたか?血圧が上がっている、手に汗を握っている、喉がカラカラする、膝がガクガクする・・・。そんなことで頭がいっぱいではありませんか?焦点は 100% 内を向いてしまっていて、外を向いていないのです。
原稿に深く入り込んでしまって、聴衆の方を見ることさえ忘れてしまっているかもしれません。たとえ見ていても、聴衆がいる方向を見るだけで、実際には誰のことも見ておらず、アイ・コンタクトを取っているふりをしてはいるだけです。聴衆の半分にだけ話しかけて残りの半分は無視するか、または前列にいる人たちだけに話したり、あるいは聴衆の頭の山の向こうにある奥の壁の 1 点を見て、誰のことも見ていなかったりしているかもしれません。もしくは、会場を見渡して全員を 1 秒ずつざっと見るだけで、実際には誰も見ていないかもしれません。1 秒ずつざっと見ていくだけでは聴衆とエンゲージしようとしているという印象を与えることはできても、聴衆の誰ともエンゲージすることはできません。これは、聴衆に焦点を合わせたプレゼンテーションではありません。聴衆はそれぞれ、こちらがただの大きな岩に向かって話しかけているのではなく、自分たち 1 人 1 人に直接話しかけられているのだと感じているでしょうか。
聴衆はかなりおバカさんだと決めつけて、スライドの文字を読んであげなければならないと思っていませんか?もっと悪いことに、聴衆に背を向けて画面上の文字を見つめたりしているかもしれませんね。文字と内容に集中するあまり、こちらの話に耳を傾けてくれている人々のことを忘れてしまっているのです。
そして、聴衆に焦点を合わせていないことを究極に示すように、スライド 1 枚 1 枚にあまりにもたくさんの情報を詰め込んでしまい、ほぼ理解不可能な状態にしてしまっています。分析志向の人だと 1 枚のスライドに 10 ものグラフを詰め込んだり、画面いっぱいに長い文書を放り込んだりします。 5 色使いのけばけばしいネオン街のようなスライドをどんどん打ち出す人もいるでしょう。もっとひどいと、最近私が見たプレゼンテーションのように、文字に 4 種類以上のフォントを使っていたりします。これでは聴衆が読むことはできません。 いったいどこに焦点を合わせているのでしょう?1 枚のスライドにこんなにたくさんの種類のフォントを使えるのだという、プレゼンターの「賢さ」を見せつけることにあるのでしょうか。たとえそれが大失敗であったとしても。意地悪のつもりはありませんが、そのプレゼンテーションとは日本人のプレゼンターによるもので、地元の商工会議所向けに、なんとプレゼンテーション・スキルについての 2 時間の講義だったのですよ。
話の構成が悪いためにだらだらと漠然と話してしまい、聴衆には分かりづらくなっているかもしれません。聴衆にとって分かりやすいように、話の理路を整然とさせていないかもしれません。「話の内容を分かりづらくしてはいけない」は基本的な原則です。 いったい何人の人を眠りに誘えるのか見たいかのように、単調な話し方をしていませんか?聴衆の印象に残したい重要なメッセージを強調するには、キーワードは強く言いましょう。あのー、そのーの名人になっていませんか?これらは実に聴衆の気を散らしてしまい、メッセージに集中させることはできません。聴衆に焦点を合わせずに、自分にとって都合が良いように最も摩擦がなく、時間効率の良いアプローチを選び、プレゼンテーション・スキルを磨くための努力は怠っていませんか?これは人一倍の努力をしないということです。
プレゼンテーション前に、練習にかける時間はゼロ以下であるということはありませんか?そのかわりにスライド作りに時間をかけてはいませんか?1 枚のスライドに 10 ものグラフを詰め込み、5 種類の色と 4 種類のフォントを使うのには時間がかかります。 このような大作業がプレゼンテーション前の予行演習のための時間をもぎ取ってしまうのです。一体、私たちの焦点はどこにあるのでしょうか?
聴衆に焦点を合わせていると思っていても、実際にはその機会を見落としてしまっているか、あるいはその目的に反して行動していませんか?ここでちょっと振り返り、実際にあなたの焦点は聴衆にあるのか、それともただそう思っているのか、考えてみてください。