会話の説得力を高める
ソート・リーダーシップ・シリーズ ビジネスプロ #14 (リーダーシップ)
いきなりですが、ちょっと実験をしてみましょう。『シマウマ』を思い浮かべてください。よろしいですか?一番最初に思い浮かんだのが、カタカナや漢字でシマウマだった方はいらっしゃいますか?いやいや、多くの方がシマウマを画像で思い浮かべたはずです。これは我々の脳が『画像』という分野における創造力に特出していることの現れでもあります。しかし絵で考える、という脳の得意分野を我々は仕事効率においてどれだけ有効活用できているのでしょうか。
今日は会話の説得力を高めるコミュニケーション方法の1つを話したいと思います。
相手の感情を動かし、自分の考えに共感や賛同してもらうことは説得力を高めるうえで大きな影響を持ちます。では、どれだけの方が感情を動かし共感を生む技術にたけていらっしゃるでしょうか。そのキーは、しっかりと計画を立てることにあります。問題はどんな計画をたてるか、ですよね?例えば、プロのコメディアンの方は練習に練習を重ねて内容を磨き、タイミングや伝え方に意識を置きます。落語家の方はどうでしょうか!立ってジェスチャーで伝えることすら出来ません!落語家の皆さんはその限られた行動範囲の中でも、何人もの登場人物を出し、情景や状況が目の前にありありと浮かぶように話をすすめられます。
この方々と我々の最大の違いは、練習の機会の量です。勿論才能もあるでしょうが、普段からその能力を突き詰めることに尽くされている方々のように上手く話すには、圧倒的に練習機会が少ない我々は、それこそ才能なしでは出来ないでしょう。ではなにでこの不足を補いましょう。
聴き手が自分から話し手の意見にたどり着くようにバックストーリーを作る、というのも有効な手段の一つです。聴き手の論理や感情に逆らって無理に自分の意見や考えを伝えようとすれば、ややもすれば、押しつけがましい!ととられる可能性もあります。ところが考えや意見が浮かび上がった経緯について話をしたらどうでしょうか。例えば社内会議で、『収益拡大に向けて、今すぐ営業職の採用を増やすべきだ!』という意見をあなたが持っていたとして、どれだけ熱弁をしたとしても、それがどうしてダメなのかという理由のバズーカかマシンガンを浴びせられることでしょう。では、聴き手が自分から我々の意見にたどり着くようなバックストーリーとはどんなものでしょうか。キーポイントはそう、聴き手が頭にありありと情景が思い浮かぶように話すことです。例えばこんなストーリーでは如何でしょうか?「先週の金曜日、赤坂にある本社の44階で、CFOの田中さんとコーヒーを飲みながら、先日社長が発表した5年間の収益目標について話をしていました。興味深いことに、セールス1人当たりの売上が、平均で年間4000万円に上ったことが明らかになった、と聞きました。新人セールスの鈴木さんでさえ、初年度の本人の人件費を上回ったと聞いて私は特に驚きました。新人は会社にとって未来投資のようなもので、最初は結果より人件費の方が上だろうと思い込んでいたからです。
その日の午後の役員会議では、更に田中さんは毎年のセールスの平均収益伸び率が50%であることをグラフで出しながら、3年目になる頃には、新人も自分の人件費をカバーし、以降の年は成果がどんどん増えるというデータをみせてくれました。目からうろこでした。ですから皆さん、5年後に我々の目標を達成するためには、今すぐセールスの採用を増やしましょう。そうすれば、目標の数字を3年目以降のセールス社員があげてくれるはずです。」
如何ですか?所要時間は70秒にも満たないです。聴き手が我慢しなければならないほどの時間ではありません。情景がより鮮明にうかぶように、聞き手が特定できる人物、場所、状況説明を盛り込んで、最後の最後でアクションを呼びかけました。「採用」に言及し、その行動によるメリットとして、「我が社が必要とする数字を達成できる」という表現でこのストーリーに花を添えました。
相手の感情を動かし、共感を得るには「いきなり」意見を押し付けるのではなく、発言内容が簡潔かつメッセージが明確であり、聞き手が理解しやすくなるような構成にして練習をしましょう。そうすれば、聞き手はあなたの提案やアイデアに賛同してくれます。
Dr. Greg Story
President of Dale Carnegie Tokyo Japan