プレゼンにおける効果的な進行
ソート・リーダーシップ・シリーズ ビジネスプロ #11 (プレゼンテーション)
プレゼンを行う際、プレゼン内容に気を取られすぎてはいませんか?
いくらいい内容でも、その進行に甘さが見えれば、いつの間にか聞き手の注意力は散漫になってしまいます。
では効果的な進行とはどのようなものでしょうか。見ていきましょう。
我々の参加するプレゼンテーションの多くは一次元的な構成です。スピーカーの方が話をして、私たち聞き手はそれをただ聞く、というスタイルです。まれにプレゼンの締めに聴き手に問いかけをする、という変化球を投げる構成も見受けられますが、結局は一方通行に聴き続ける一元的な構成です。特に社内プレゼンテーションでは、この光景をよく目にします。スピーカー自身が進行役も務め、議題の提示から議論を促し、さらには結論の先の意志決定までの進行を務めます。しかし、進行役として訓練をしたスピーカーは数少なく、深みを出し切れずにもったいない進行をされるケースが多く見受けられます。
プレゼンは、プレゼンの内容は勿論のこと進行まで含めて一つのパッケージです。折角腕の立つ良いお医者さんだとしても、受付の方の対応がずさんだと、良い病院だという評価をしないでしょう。それと一緒です。進行をするうえでまず心がけるべきは『切り替えをしっかりと行う』ということです。ひとたびプレゼンが始まれば、当然スポットライトの中心はスピーカーです。話すモードに入るわけです。では、例えばプレゼンの前後は如何でしょうか。優秀な進行は、この時にできるだけ多くの聴き手にスポットライトが当たるように振る舞います。「話すモード」をオフにして、「聞くモード」に入り、聞き手はどんな興味を持っているのか、共感できる点はどこか、それがプレゼンにどのように活かせるのかを探し出します。プレゼン中に質問や反対意見を受けた時はどうでしょうか。話すモードが全開のときに、急に聴くモードに切り替え、自分の主張を控えることは想像以上に難しいものです。切り替えが中途半端な状態で質問や反対意見を受ければ、頭の中の自己防衛システムが働き、何かうまいことを言って自分の主張の正当性を示してやろうと頭の中に火が点きます。脳が話すモードで活性化しているので、回答や反論を展開しているうちに話がそれ、これも話さねばあれも話さねばと、いつの間にか相手が持ち出した議題から逸れた話になり、『ところで質問は何でしたっけ?』とスピーカーが聞きなおす場面に遭遇したご経験があるという方もいらっしゃるのではないでしょうか。その結果『こっちの主張に耳をかす気はないんだろ?』と聞き手は聞くことをやめてしまいます。または『そっちがそういう態度なら』と自分が聞きたいことだけを選択して聞くようになり、残りの内容を無視するようになるのです。相手の観点や真意を聞き出すリスニング・スキルを身に付け、相手の質問や反対意見に対し傾聴をすることが大切です。相手の話し途中で意見を遮るなんて、相手だけではなく聴き手全体のエンゲージメントを下げることにも繋がりかねません。頭を冷やして切り替えを行い、傾聴することを徹底してください。
逆に質問を募集して沈黙が出たらどのように対処すればよいでしょうか。そして他にはどんな点に注意すべきでしょうか。
質問を募集したのに誰も話し始めない。沈黙が出る可能性があるならいっそ募集をしなければどうか?と沈黙に恐怖を感じる方もいらっしゃるかもしれません。聞き手に質問をしたら、たとえ直ぐに相手から返答がないとしても、その後はこちらも沈黙してください。沈黙を恐れる必要はありません。譲り合いの文化を持つ日本では特に、聴き手が譲りあっている可能性があるのです。中には意見や質問が色々とあって、整理をするために深く考えている方もいらっしゃるかもしれません。ここで沈黙に耐え切れずにこちらが答えを言ってしまえば、聞き手は『なんだ、言わなければ勝手に答えてくれるのか』と結局一次元的な内容になってしまいます。可能性として考えるべきは、こちらの質問が分かりづらかったのかもしれない、という場合です。そんな時は質問がクリアだったかどうかの確認を取り、必要に応じてこんな状況ではどうでしょうとより分かりやすくなるようなコンテキストを出しながら、出来る限り多くの聴き手にエンゲージメントを高めるチャンスを提供しましょう。
また、反対意見や質問は歓迎する、という考え方を持つことをお勧めします。質問が出るということは、興味を持ってくれていることに異なりませんし、反対意見は、勘違いを避けたり内容を更に分かりやすく説明するチャンスなのです。この時、余裕のある方は、自分の表情にも気を配りましょう。反対意見処理などほかのことに気を取られていると、表情やボディランゲージがおざなりになることが多々あります。特に焦っているときなどにそれが表情に出ないよう、気を付けましょう。自身の印象につながる、重要なポイントです。
進行の手助けとして、質問形式の使い分けもあります。確認や合意をとる時に主に使用する、クローズエンド型の質問をするときと、議論を促すためにオープンエンド型の質問をするときを使い分けなければなりません。この時、第三者の意見として議題を立ち上げるのも良い方法でしょう。たとえば、「一部の方々は、変革を迎えているこの時期は新しいプロジェクトを立ち上げるのに最も良い時期だと言っています。この点に関し、みなさんは現場にいてどんな印象を持っていますか?」というように質問します。ご自身一般的な意見として立ち上げることで、聴き手が反対意見を言いやすくなります。
気を付けるべきは、出た意見を尊重し、敬意を示し、決して真っ向から否定しないことです。相手に恥をかかせるような返答などしてしまった日には、折角積み重ねた信頼関係が水の泡になります。
このように、単純に見える進行も中ではいろいろなことに気を配らなくてはいけないのです。その時その時で自身に求められる役割を瞬時に理解し、行動することが優秀な進行に求められるスキルなのです。逆に言えばそこさえ押さえることが出来れば、聴き手のエンゲージメントを高め、信頼を勝ち取るプレゼン環境を実現できるのです。
Dr. Greg Story
President of Dale Carnegie Tokyo Japan