日本でブレーンストーミングする方法
日本は真似するしかできない!これは、その昔、日本のイノベーションについて言われていた言葉です。日本にはイノベーション能力がないと軽蔑するものとして使われていました。確かに、日本は真似をするのに長けています。ここでは、驚くほど細かい点にも気が配られています。問題の一部は、何百年もの鎖国によって、日本は細かい改良を繰り返す「改善」に信じられないほど熟練した点です。ブレークスルーをもたらすようなアイデアは、ほかのどこかで行われていました。これは重要なことで、新しいアイデアを思いつこうとするとき、単に過去に行ったことを向上させるようなアイデアが欲しいのではなく、できれば競合に大きく差を付け、開発の次のレベルに進めるようなものを望んでいるのだということを覚えておかねばなりません。
この現象が見られるのは日本だけではありません。Nokia 社は、優れた電話をどんどん作っていました。しかし、スティーブ・ジョブズが、スマート・フォンというイノベーションをもたらして、Nokia を倒し、Apple 社は世界市場を独占するようになりました。DVD のレンタル市場は、Netflix のようなストリーミング・サービスによって崩壊しました。このような世界規模のゲーム・チェンジャーを生み出せないかもしれなくても、確実に社内でイノベーション能力をもっと推し進めることはできます。
確かに、ブレーンストーミングの仕方によって、その努力が成功するかどうかが決まります。典型的なモデルとしては、上司がマーカー・ペンを振り回してホワイト・ボードにアイデアをどんどん書き出します。アイデアを出すように頼まれるのですが、ここがよく致命的な間違いが起こるところです。上司はアイデアが出されるとすぐに批判し出すのです。「それは以前にやってみて、うまく行かなかった。じゃぁ、次」とか、「それは馬鹿げたアイデアだ。全然現実的ではない。次」、「そのアイデアはまったく気に入らない。次」とか、言うのです。こうした批判はアイデアを出した人を潰し、彼らは深いところに沈んだままで、それ以降はブレーンストーミングに参加しなくなり、チームによるアイデア創出からは失われていってしまいます。
日本は、人口が密集した生活環境において調和を基本に行動するため、個人的な批判にはあまり上手に対応できません。誰かのアイデアを公の場でズタズタにするということは、まるで死刑執行をしたようなもので、その人が将来アイデアを出すことは一切なくなってしまうでしょう。このような方法では、多くの良いアイデアがたくさん出る可能性を失くしてしまい、声高で、上司に賛同する数人の者たちで進行が独占されてしまいます。彼らが、本当に頭が良ければ良いのですが・・・。
ここで重要な点は、このような方法でしてはいけないということです。そうではなく、批判や判定、評価、称賛は一切しないで、自由にアイデアを出してもらうのです。その目的は、できるだけたくさんのアイデアを出してもらうことにあります。もちろん、まったく実用的でない、奇想天外なアイデアも出てきます。しかし、何でもアリの、このような状況ではそのような奇想天外なアイデアが出て来なければならないのです。奇想天外で実用的でないアイデアの楽しいところは、それをわずか変えるだけで、天才的なアイデアに変わる点です。しかし、これは最初の奇想天外なアイデアが差し出されなかったら起こらなかったことでしょう。
また、深く考える人たちを無視してはなりません。彼らは何も言わずにアイデアを消化するのですが、すぐに結論を下せる周りの人たちがすごい勢いで話し始めてしまったので、理路が整然としていない、まだ半分しか考えていないアイデアを出すことは犯罪のようなものだと考えて、さらに背景に押しやられてしまうのです。私たちは常に時間がないため、猛スピードでアイデアが却下されていくのに気づかないまま、会議を進めていきます。会議が終わり、これらの深く考える人たちは、一度も取り上げられたことのない、いくつかの良質なアイデアと共にそこに置き去りにされます。
日本では素晴らしいアイデアにはたくさんありますが、重要な点は、これらのアイデアが育まれる正しい環境を作ることです。あなたはかなり単純なことであると思うかもしれません。日本では、ペンを振りかざす批評家気取りの上司たちは未だにはびこっています。あなたの部署ではそれは止めようではありませんか!入社したのが他の人たちよりも早いとか、年が上だとか、上級だとかいう、瞬間的なアイデアの批評は排除しなければなりません。日本人の従業員はいつも他の人の方が「もっと良いアイデア」だからと遠慮します。それが日本でうまくやって行くためのやり方だからです。日本では、変化をもたらすには多大なエネルギーと、規律、そして我慢が必要です。
イノベーションを望むなら、自分たちのアイデアを出す自由を部下に与えなければなりません。それをするには、アイデアいじめをする人を黙らせ、静かな中でアイデアが生まれるようにし、深く考える人たち全員がアイデアを把握するまで何回も検討して、アイデアの批判を受けることなく創出できるシステムが必要です。全員に対し、最初の段階で私たちが望んでいるのはアイデアの数であって完璧さではないことを伝える必要があります。
しかし、古い習慣はなかなかなくなることはないため、議論を制御できる誰か他の人に進行役を任せます。批評があまりに早く出される場合は、その人に考えをとっておいてもらうように伝え、他の人たちには会の進め方について念を押す必要があります。かなり早くにすべてのアイデアを出してしまったので、今度は話したいといって、沈黙に耐えられない人もいます。この人たちには、誰であろうと、黙ったままで、他の人もアイデアを出せるようにしなければなりません。これは新しい方法なので、反発があることでしょう。より良いアイデアが必要であれば、より良いアイデアの創出方法が必要で、この新しい手法が変化を表しているのです。批判が来るのを予測してください。でも、現在の見せかけのアイデア創出よりももっと強力ですから、もう前に戻ることはないでしょう。
ですから、まずはアイデアを出しましょう。そして、選択を行い、第 2 段階で判断を下すのです。