自分の間違いに対応する
ミスをなくすよりもミスに対応するスキルの方が重要です。
皆さんには是非とも失敗していただきたい! そうです、現在の自分があるのは、これまで失敗を重ねてきたからこそです。試してみて失敗しやり方を変えることで、私たちはうまくいくことといかないことを学んできたからです。
アメリカのバスケットボールの監督として有名なジョン・ウッデンは「失敗することは致命的ではないが、変化しないことは致命的かもしれない」という言葉を残しています。誰でもミスしたり失敗するものだということをウッデンは伝えたかったのだと思います。大事なのは、ミスしたり失敗した後でどうするかです。
日本ではミスは特に切迫した問題です。ミスをすれば、厳しい目にさらされます。日本人はミスを恐れる気持ちが強すぎるばかりに、ミスする可能性が高い、新しいことや不慣れなことを試すのに非常に慎重です。
日本で育った人は、小さい時からこのことを刷り込まれてきました。ある商品の新発売キャンペーンの一環として雑誌用の写真を撮影しに訪れた日本の映像制作グループと一緒に仕事をした時に、私はその例に遭遇しました。
場所はゴールドコーストのサーファーズ・パラダイスにあるビーチ。フィルムを交換していた第2カメラアシスタントが撮影済みのフィルム容器をうっかり砂に落としてしまいました。すかさず背の低い監督が走り寄ると、身長190㎝、体重100キロはあろうかというこの若者の頭をバシっとたたき、罵声を浴びせ始めました。
日本でのミスへの対応は、確かに愛のむちの部類に入ります。このことがイノベーションや創造性の開花を困難にしています。成功したときに得るものよりも、失敗したときの懲罰の方がはるかに大きいからです。創造的なプロセスは一筋縄ではいかず、試行錯誤がつきものでありミスが起きるということを、私たちはリーダーとして説明する必要があります。
クライスラーの経営トップだったリー・アイアコッカは、マーケティング担当役員の失策によって被った数百万ドル規模の損失に対する見事な対応で一躍有名になりました。問題の役員は額が額だっただけに、アイアコッカのオフィスに呼ばれてクビを言い渡されると思っていました。彼はオフィスに入ると、「私をクビにするおつもりですよね」と切り出しました。「クビにするわけないだろう。君の教育に数百万ドル使ったばかりなのに」アイアコッカはこう返答したそうです。
ご自分のミスをどのように捉えますか? 教育の一環ですか、それとも自分をこてんぱんに打ちのめしますか? ミスにくよくよせず成功へと前進する5つの方法をお教えしましょう。
払いのける
完璧な人間などいません。誰でも時折ミスを犯すものであり、ミスは必ず起こります。くよくよせずに、避けて通れないものは受け入れ、自分のしていることに集中しましょう。そうすることで学ぶわけですから、ミスを教育の一段階とみなすことです。ハイテク環境では、「早い段階で失敗する」がキャッチフレーズです。画期的な成功をおさめるには新しいことを試してみることが重要なことを、ハイテクに携わる人々は知っているのです。ミスの理由を分析してみると、常に仕事を抱え込んで慌てていることが理由の場合がよくあります。生産モード全開であるばかりに、確認する時間を取りません。ミスをビジネスコストと考えて前進し、このコスト要因を軽減しましょう。
些細なことにこだわらない
どうでもいいことは忘れることです。無意味なことや価値が低いことに完璧を期すのはばかげていますし、組織に大したメリットをもたらしません。小さなミスを気にしなくなれば集中力は高まり、大きなミスが発生する前に防ぐことができます。分野によっては正確さが重要ですから、重要局面に入るときはスイッチを入れることが必要です。そこに至ったら速度を落として一日の数分間は完璧を目指しましょう。一日中その状態を保つ必要はなく、そうしないからといって自責の念にかられる必要もありません。
過ぎたことはくよくよしない
ミスを払いのけて前進しましょう。昨日(あるいは明日)を生きても仕方ありません。ばかげていても恥ずかしくても起きたことは忘れることです。過去を水に流せば、目の前の仕事に集中できます。「ミスは啓発の素」そのように考えて立ち上がり、一歩を踏み出してください。誰もが自分の事で精一杯ですから、あなたのことはすぐに忘れて自分自身に没頭する状態に戻ります。意図せず一種の娯楽を提供したかもしれませんが、記憶に長くは残りません。メディアが取り上げる暗いニュースのように、新聞は翌日には魚の骨や野菜くず、その他のクズでいっぱいです。世界は前進したのですから、私たちも前進すべきです。
ミスから学ぶ
ミスしたらミスした理由を突き止め、書き留めて気持ちを切り替えることです。頭に刻み込んでおけば、次回同じような状況になった時に注意深く対応できます。皮肉なことに、科学や技術の画期的な発見や発明は意図したことではなくミスから生まれています。ブレーンストーミングでは、ばかげたアイデアから天才的なアイデアが生まれることがあります。両方が揃ったからこそ、素晴らしいアイデアが生まれるのです。自分のミスを輝かしい未来へのきっかけや触媒と考えましょう。
疲れる前に休む
単に疲れているためにつまらないミスをすることがよくあります。疲労と焦りが重なると非常に悪い兆候です。疲れていると、雨後の筍のようにミスが頻発します。十分な睡眠を取り、時折「スピードを落とせ」や「休憩」と自分に言い聞かせることです。自分にとってベストな仕事のリズムをつかみましょう。第二次大戦中にイギリスの首相だったウィンストン・チャーチルは葉巻をくゆらせウイスキーを飲みながら夜中に書き物をするのが習わしでした。早起きして午前中に創造力を発揮する人もいます。自分の仕事のリズムがわかれば、そのゴールデンタイムを確保して必要とされるクリエイティブな仕事にその時間を充てましょう。求められる仕事にそぐわない動きを身体の自然なリズムに命じたために、ミスが起きることがよくあります。能力、エネルギー、仕事の性質がぴったり一致するよう努力することが大切です。
バスケットボールの話に戻りますが、マイケル・ジョーダンにも失敗についての名言があるのでご紹介します。「9000回以上もシュートを外し、300試合に敗れ、決勝のシュートを任されて26回も外した。人生で何度も何度も失敗してきた。だから私は成功した」
ビジネスではミスをしたからといって、「ゲームオーバー」になることはめったにありません。ビジネスは短距離走ではなくマラソンです。首尾一貫して信頼性と持久力を持つことが必要です。ミスをなくすよりもミスに対応するスキルの方が重要です。ミスを一切なくすことはできないのですから、次に来るものを見極める方が重要です。
ミスに対応する重要なポイント
- 払いのける
- 些細なことにこだわらない
- 過ぎたことはくよくよしない
- ミスから学ぶ
- 疲れる前に休む