日本のビジネスで説得力を示す方法
「文脈から始める」というアプローチ
ビジネス・スクールでは、エグゼクティブサマリーを書くときには、まず結論から始めて本文で証拠と主張を述べるように教えています。誰かに読んでもらうために書いているのであれば、これは当然至極、完璧でしょう。また、市場の可能性や、製品の発売が以下に成功したか、などについて報告するのであれば、これは相当理にかなっています。忙しい人たちは、要点を素早く示してもらうことを期待します。他にもっと差し迫ったニーズに取り組みたいからです。もし、人に話をするときに相手を自分たちの考えに同意してもらえるように説得しようとするのはまったく間違っています。これでは失敗するのは目に見えています。絶対にしてはなりません。
でも、実際にはやってしまいますよね。始めから結論を出して、なぜ計画どおりに行かないのか不思議に思うことはありませんか?こちらが思い描いていたようには、すぐに同意してもらえません。ここが現実と理想で違う点です。結論を示すと、待ち受けているのは批判の壁や、話を自分の方に持って行ってしまう人、討論、冷やかしだけです。こちらの主張をいったん明らかにしてしまったら、あなたは無防備のままで批判の的になるしかありません。「いや、その後で証拠を示すことで弁論できる」と思うかもしれませんが、それはあまりにも楽天的でしょう。
実際、冒頭の結論が始まるとすぐに、相手はこちらの話を聞くのを完全に止めてしまいます。 彼らはあなたより頭が良いと思っているので、あなたの話をこれ以上聞く必要はないわけです。何か頭の良いことを言って、あなたが勧めることをズタズタに崩すことに完全に集中しています。彼らの頭の中は、反対の主張や自分の考え、どうやって自分たちを良く見せるか、代替案は何か、などでざわついています。背景のホワイトノイズ、つまりあなたの話は聞こえてはいますが、それよりももっと重要なことを言わねばならないと信じているので、あなたの話の内容には集中していません。
このようなシナリオを避けるには、先に挙げたビジネス・スクールの教えは捨てて、その逆をやるべきでしょう。人に何かを勧めるときは、まず証拠から始めるのです。それもショート・ストーリーの形を取ると良いでしょう。でも、長すぎてはならず、だらだらと漠然と始めてはなりません。簡潔にすっきりと要点だけを伝えるのです。
ただし、ストーリーは心の中で情景が浮かぶように言葉豊かに表現します。相手が分かりやすいように、彼らにとって馴染みがある場所や、季節や年度内の節目、節目と関連付けて出来事の経過について話します。彼らはこの話がどう自分たちに関わってくるのか分からないのであなたの話を聞かなければならないため、話を遮ったり、聞いたりするのを止めるわけにはいきません。
私たちは、勧める内容の文脈を売り込まなければならないのです。相手に情景を思い浮かばせることで、何が起こらなければいけないかについて自分たちで結論を出せるように仕向けます。そして、文脈を示すことで、論理的にこういうことが起こらなければならないのだということを伝えます。相手が、あなたが示すものと同じ証拠に基づいて、あなたと同じ結論に行きついたら、あなたはこういうことが起こるべきだと伝えます。そしてそれを行った後すぐに、提案から得られる結果やメリットの話をします。文脈、推奨、そしてメリットの順です。
話が簡潔であれば、相手の関心を失うことはありません。これが話し方を練習しなければならない理由です。短いプレゼンテーションでは、1 つ 1 つの言葉が非常に重要になってくるので、意味のない余計な言葉はすべて排除しなければなりません。あまり詳しく話し過ぎてしまい、いろんな情景が浮かぶようだと、相手は関心を失ってしまい、イライラしてあなたの話を聞かなくなってしまいます。ですから、細かい点にとらわれずに、十分に力強い証拠を示さなければなりません。このような細かい点はあとで話せます。でも、最初の段階における重要なドライバーは、あなたの一般的な方向性に相手を同意させることなのです。
この「文脈から始める」というアプローチは、相手はあなたの結論に反対できても、あなたの文脈には反対できないため効果的です。たいてい相手は、あなたが持っているほどその文脈について詳しくはないため、背景の詳細についてあなたを討論で打ち勝つことは難しいでしょう。また、あなたが何を提案しようとしているのか知るには、関連する情報がすべて得られるまで待たなければなりません。これが肯定的なことなのか、否定的なことなのか、あるいは過去か、現在か、未来のことなのか分からないため、あなたの話を遮ることはできません。あなたの話をすべて聞くまでは何も言えなくなるわけです。どうですか、素晴らしいでしょう!実際、これは魔法のようにうまく行きます。この文脈・推奨・メリットの法則が「マジック・フォーミュラ」(魔法の法則)と呼ばれるのはそういう理由です。