後継者を育てる5つのヒント
ソート・リーダーシップ・シリーズ ビジネスプロ #22 (リーダーシップ)
我々リーダーは、時に権限委譲をします。理由は様々あるかと思いますが、権限委譲のその先、リーダーが不在の際にも責任とオーナーシップを持って業務に対応する、そんなご自身の『後継者』を育成することは、組織の将来を成功に導くには不可欠です。では、その為に我々は何を意識すべきでしょうか。早速見ていきましょう。
最初のヒントは『長期戦略と人事計画を一致させる』です。まず、会社の5-10年先の長期のビジョンと、その為の目標達成に必要なリソースを明確にします。ビジョン達成には何が必要になりそうか、チームの人数はどうでしょうか。この数字は、当然ながらコストとキャッシュフローを左右する重要なキーです。この際、一人一人の生産性や価値観を把握しておくことが、後の権限委譲や後継者育成に大きくかかわってきます。また、生産性のデータがクリアであればあるほど、伸び率やかかる時間が明らかになるため、コロナのような外的要因が関わらなければ、会社が混乱に陥ることを防ぐこともできます。
2つ目のヒントは『人材ギャップを分析する』です。ビジョン達成のために必要なリソースが明らかになったら、今度は不足が出る可能性を洗い出します。長期における成長を踏まえ、新たに必要となる人材の数や質を突き止め、現在のリソースと比較します。その為には、時間の経過とともに変化する需要と供給がどう変わるかを予測し、そこから対応方法を判断する必要があります。増減に関わらず、その決定が単なる人事異動ではなく、ビジョン達成の為に将来の必要となる人材である確固とした『ビジネス戦略理由』が絶対必要条件です。その場しのぎで人材を中途採用するのと、目的をもって社内で育成するのと、御社はどちらがお好みでしょうか?
そして3つ目のヒントは『功績の認識化』です。『自身の仕事を会社がしっかりと認識している』ということが感じられると、当人の自信やエンゲージメントにどのような影響が出るでしょうか。この認識化は特定の部のみで行うのではなく、経営幹部から有望な新入社員に至るまで全員が対象になります。会社のVisionに沿って各部署が作り上げた目標や各々の達成基準に則り、功績を認めるべきです。
エンゲージメントが高まれば、仕事への能動性の向上や離職率の低下につながります。後継者を育てるには、会社のカルチャーやその方のキャパシティーや、役職によっては人間関係性も深くかかわってきます。その為、社外から探すより先に、まず組織内で適合するスキルや可能性を秘める方の人選を行う会社が多いでしょう。より高いエンゲージメントとコミットメント力を作る環境整備は、優秀な人選候補を増やすことにも繋がるのです。更にボーナスとして『平均業績の底上げ』も期待できます。20%の社員が業績の80%を生み出しているというパレートの法則というものがありますが、逆に言えばこの80%の社員の業績を上げることが出来れば、業績への大きなプラス影響を生み出す可能性すら秘めているのです。
4つ目のヒントは『引継ぎプランを立て、実行する』です。後継者候補者を特定したら、候補者の今後の昇進に向けて戦略を練ります。権限や責任の譲渡、評価目標、期限、コーチングなどの計画を立てます。努力を正しく認め、権限と責任範囲を広げ、相手にニーズに沿った報酬で報います。必要性が生じる前に、独り立ちできるようにまでなることが出来れば、不足してから対応という後手後手のパニックや半ばダンピングに近い職務の押し付けを避けることが出来ます。
最後のヒントは『フォローアップ』です。プランを実行し、その進捗状況を周囲に確認します。候補者の伝え方はどうか、内容としては分かりやすかったかといったポイントを、第三者目線のフィードバックとして得ることが出来ます。場合によってはクライアントに直接それとなく確認をする必要もあるかもしれません。フィードバックがかんばしくない場合、プランを練り直す必要があります。良いフィードバックであれば、目標値を調整し、プロセスの最適化を図ることが出来ます。この時も、進捗についてしっかりと候補者を認めることが大切です。プレイヤーとして高い業績を誇る方を管理者候補とする場合も、しっかりと進捗確認をする必要があります。プレイヤーとして優秀な方が、部下管理のスキルも高いかというと常にそうであるわけではありません。プレイングマネージャーの役職などのケースでは、場合によっては、管理者としてもプレイヤーとしての質も両方落としてしまう可能性もあるのです。この危険性を共通の認識とし、しっかりとプロセスに重きを置いてトレーニングを実施して『エンゲージメントの高い優秀な候補者』を育てましょう。
Dr. Greg Story
President of Dale Carnegie Tokyo Japan