セールス

顧客を忘れない、顧客に忘れられない

この助言は営業に関して古くから伝わる言い回しですが、忘れられがちです。セールスパーソンは取引を成立させた後も営業活動を継続します。そのうち他のクライアントへの働きかけや、以前に販売したサービスや製品を提供するための細かな作業に没頭していきます。スケジュールはあっという間に埋まり、過去ではなく現在と未来で埋め尽くされてしまうでしょう。その忙しさの中、以前の顧客は忘れ去られ、先方もまた私たちのことを忘れてしまいます。クライアントの新規開拓は獲得コストベースで高くつき、既存クライアントへ再度、あるいはより多く販売する方が容易であることもわかっていながら、なぜ既存の顧客とのビジネスをうまく発展させられないのでしょうか。

通常、販売直後にはよいコミュニケーションが保たれることが多いのですが、「直後」に限られてしまうようです。その後は新たなコンタクトを追うのに忙しく、近況確認はしなくなってしまいます。クライアントがすでに製品やサービスの恩恵を受けていると考え「その後いかがですか、何か問題が起きたりお手伝いできることはありませんか」と改めて電話をかけ直したりしません。しかし、クライアントとのコネクションを常に保つことは有効な手段です。彼らが満足していれば、同様の恩恵を与えられる相手が他にないか尋ねることができます。もし満足していないなら、問題の解決に協力できるでしょう。不満足な点について連絡がないことは、知らないうちにブランド力や評判低下につながるため望ましくありません。

クライアントによっては、購入に関して一定のペースに基づく周期的なニーズを持っている場合があります。また、アップグレードや 買い替えにもフォローアップが必要です。これらのケースではスケジュールをメモしておくことで、連絡を確実にできます。しかしそのような流れが予測できない場合は、個別にスケジュールを作成し、先方に忘れられないようにすべきです。以前のクライアントに連絡してみたら、せっかくニーズがあったのに競合他社のソリューションを利用されていたことが判明するほど悔しいことはありません。そのような目には遭いたくないものです。

クライアントにメーリングリストに登録してもらえば、更新情報を送ることはできますが、それでは読んでもらえない、あるいは気づいてすらもらえないという問題があるため「設定しておけば忘れてOK」という考えはよくありません。日常生活の忙しさや騒音の中、常に目を向けてもらえる働きかけをする必要があります。このことは現代ではかつてないほど難しくなっています。たくさんの電子メールやソーシャルメディア、そして会議に、クライアントの担当者が振り回されてしまうのは当然です。昨今では電話で誰かをつかまえることも困難で、成功すれば奇跡のようなものですし、折り返しの電話もかかってきません。

日本には季節の贈答という習慣があり、取引先に対してあなたのことを覚えていますよ、と知らせる意味があります。 この方法はクライアントの件数によっては金額がかさみ、大企業でなければ対応しにくいかもしれません。それなら、取引の記念となる日に合わせて手書きの礼状を出すという方法なら、費用もかからず郵便のやりとりが少なくなった中、目を引くことでしょう。なかなか電話口に出てもらえない場合でも、諦めないでください。先方はあなたの声を聞くことで、心に留めてくれていたことを知ります。聞くところによると、ミレニアル世代の社員は電話を毛嫌いし、テキストメッセージのやりとりを好むそうですが、年齢を問わずとにかくボイスメールを残しましょう。

業務に関わるホワイトペーパーや書籍、レポート、メディアの切り抜きを送ることは常に良いアイデアですが、機会まかせにするのはよくありません。特定のクライアントを念頭に置いて、関係のありそうなアイテムを探すとよいでしょう。彼らの関心を引きそうなものを見つけて送るように心がけます。毎月送る必要はありませんが、クライアントがすでに受け取っているメールマガジンや ニュースレターに加えると、年に2回程度の頻度が適切と思われます。

自分へのリマインダーを設定することは、すばやく持続的なフォローアップを確実にするための最善の方法です。フォローしようという心がける気持ちも素晴らしいものですが、計画され、その通りに実行される連絡にはかないません。デジタルでもアナログでもかまいませんが、クライアントへのアップデートとフォローアップを確実にしてくれる仕組みを確保したいものです。あなたがまだそうした仕組みを設定していないのなら、たった今から作りましょう。

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