デール・カーネギー・リーダーシップ・コースの始まり

18世紀から現代の企業の経営者にとって、優秀で頼れるマネージャー陣はビジネスを運営する上でなくてはならない存在でした。そのため、当時から組織の中でマネージャーを育成することは重要視されていました。しかし、実践的なリーダーシップのトレーニングはあまり存在しなかったため、多くの企業はOJTに頼るしかありませんでした。

1912年にデール・カーネギー・トレーニングを設立後、デール・カーネギーは「デール・カーネギー・コース」を創設しました。デール・カーネギー・コースは、もともとは人前での効果的な話し方を教えるものでしたが、徐々にリーダーシップや優れた人間関係づくりを学ぶプログラムへと進化していきました。1936年にデールの世界的ベストセラー、「人を動かす」が出版されると、デール・カーネギー・コースへの需要は爆発的に増え、すべてのビジネスプロフェッショナルが受講するべきプログラムとして世間に知られるようになりました。

第二次世界大戦後、多くの軍隊経験者は企業で働き始めました。元軍人である彼らの経営手法のほとんどは、トップダウンのマネジメントが中心で、現代企業にはあまり向いていませんでした。デール・カーネギー・コースは、説得力、コミュニケーション力、人間力のスキルを向上させるのに適したプログラムでしたが、一方で、より実践的なリーダーシップの手法を教えてくれるコースが求められていました。

1960年代初頭、デール・カーネギー・コースとドロシー・カーネギー・コースの責任者であるジョン・クーパー、パーシー・ホワイティングを含むデール・カーネギー&アソシエイツのスタッフは自分たちの経験や知識をもとに、試験的にリーダーシップコースを制作し、各フランチャイズへ社内研修として導入しました。各フランチャイズの経営者の多くはビジネス経験のない教師、エンジニア、科学者などであったため、彼ら自身もマネジメントトレーニングを必要としていました。

デール・カーネギー・トレーニングのハワイのフランチャイズ代表を務めたウィットローは、デール・カーネギーのビジネス以外に、2つのビジネススクールの経営に成功していました。また彼は、「マネジメント・セミナー」と言う経営に関した講演も行っていました。ウィットローの講義やビジネススクールは、実践的なリーダーシップスキルを教え、現代企業のニーズに応える内容であったため、大人気でした。噂を聞きつけたジョン・クーパーは、1963年にハワイへ渡り、ウィットローのリーダーシッププログラムを受講しました。結果、ウィットローはデール・カーネギー&アソシエイツとコースの所有権についての契約を結び、彼のプログラムは世界中のフランチャイズで教えられるようになりました。そして、ウィットローのリーダーシッププログラムをもとに、デール・カーネギー&アソシエイツは研究と実験を重ね、新たな「マネジメント・セミナー」を創設しました。

1967年、このプログラムはさらに進化し、「デール・カーネギー・スーパービジョン・アンド・マネジメント・セミナー」と改名されました。1976年には、「マネジング・スルー・ピープル(人を介したマネジメント)」と言うマネジメントのセミナーのための新しい教材が作成されました。1992年には、さらに更新され、「リーダーシップ・トレーニング・フォー・マネージャー・コース」と改称されました。

このコースの研修は、指導をする立場の人々にとってとても有益なものでした。トレーニングでは、リーダーシップ、コミュニケーション、コーチング、権限委譲、管理、イノベーション、会議の運営など、リーダーが成功するために必要な実用性の高い知識をすべて網羅しました。

1991年、デールは新たな2日間の対面式プログラムを試験的に運営し始めました。のちに「交渉と機転に長けた上手なコミュニケーション」と「ステップ・アップ・トゥ・リーダーシップ」という二つのコースが発表され、好評を得ました。1993年には、マイケル・クロムとスチュアート・レヴィンによる「ザ・リーダー・イン・ユー」(あなたの中のリーダー)と言う本が出版され、同名のトレーニング・プログラムが作られました。

2019年、更なる改善を経て、マネジメント層向けの「デベロップ・ユア・リーダーシップ・ポテンシャル」(リーダーシップの潜在力を開発する)と、経験豊富なリーダー向けの「リーダーシップ・トレーニング・フォー・リザルツ」(結果を生み出すリーダーシップ・トレーニング)と言う2つの新しいプログラムが開始されました。

アメリカンフットボールチームのグリーンベイ・パッカーズの名コーチ、ヴィンス・ロンバルディは、試合中の基礎として、ブロックとタックルの重要性をよく語っています。デールが開発したリーダーシッププログラムも、同じく基本的なトレーニングに注力しています。デール自身、アメリカの名門大学と同じようなものを教えることはできないと理解していたため、実践的な知識や応用できるスキルを提供することに重点を置いていました。

その結果、何千人にも及ぶ世界中のデール・カーネギー・トレーニングの修了生は、組織のシニア・リーダーとして活躍するようになりました。デール独自の人間関係に対しての哲学的な視点や優れたコミュニケーションスキルにより、彼のリーダーシッププログラムは人気を博し、現在も運営されています。また、常にプログラムの内容を更新し続けることより、デールのリーダーシップ・トレーニングは、どんな時代にも適応できる研修になっています。

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